寺という公共的な場所のため、ある程度オーソドックスな庭となっている。そこには、奇をてらうのではなく、心のやすらぎを感じてほしいという想いがある。
また、誰でもが来て楽しめる庭、花が絶えず咲いている庭、品格のある庭としている。
アプローチ〜門
駐車場からスロープを登ると、石門がある。寺へは必ずこの門をくぐって入ることになる。この門には33梵字を彫られ、下には33観音の蓮の花を彫られている。「ここからは日常とは別世界、観音様の霊場へ」という意味があるのだそうだ。
境内
門から階段を上り、境内へ進むと景色がぱっと開け、広々と明るい空間がある。砂利が敷かれ、きれいに掃き清められた気持ちがよい空間である。寺であるから、行事ごとに人が集まることが多い。お正月に節分、そして5月には薪能が奉納される。地域はもとより、遠方からの参詣もあるという。
影向の松
境内の背には影向の松がある。
仏の世界から慈悲の光を放つと伝えられる樹齢300年の松である。古くから大事にされ、結界で囲われていた。
不洗観音寺は、女性と子供の信仰を集めている観音様を祀っている。参詣者は、女性と小さな子供、その祖父や祖母が多い。亀田は作業中、参詣者をよく見かけるという。
小さな子供は母親に手を引かれていることも多いため、敷石の通路は2人で十分に歩きやすいよう、意識せずとも安心してスムーズに歩けるよう配慮してある。
- 使い勝手がいい
- 危険でない
- 安全で動線がスムーズ
補陀落の滝と池
境内から奥に進むと、補陀落の滝と池のある庭がある。
補陀落とは観音様が住むという地である。滝は、那智の滝をイメージし、石を重ねている。遠目には分かりにくいが、石の大きさはかなりのものである。石は大きなものになると2億年以上生きており、荘厳な雰囲気と、重みがある。亀田は、石を組み上げていくのは非常に面白いと語る。補陀落の滝に石をこよなく愛する庭師の姿を見る。
池の周りにはもみじと季節の花や野草を植えてあり、四季折々に景色を楽しむことができる。庭は見る角度によって景色を変える。日本庭園の魅力、楽しみの一つである。
中庭
記録に残っておらず、いつ造園されたのか判然とはしない庭である。今まで境内で手を付けられていない唯一の場所であり、おそらく250年はさかのぼるのではないか、という。苔むした岩や庭木があり、現状のままを生かすよう改修した。